ご挨拶
こんにちは,Dr Tomと申します.有機合成化学という実験系科学の一分野で博士号を取得しました.もっとも最近の実験はといえば簡単なアシル化やクロスカップリングばかりという,どこにでもいそうな30代半ばです.2013年より量子化学計算にGaussianを,2018年より分子動力学計算にAmberを使い始めました.プログラミング言語は主にpythonを触っています.
しばしば「日本のお家芸」などと呼ばれる有機合成化学は,当然国内にも従事者は多く,著名な先生方が多数存在する分野です.しばしば「芸術」にも例えられるように,有機合成化学には高度な頭脳労働やクリエイティブな作業が不可欠です.しかし普段の研究生活の実態は労働集約型であることが多いため,最近よくニュースで耳にする「テクノロジーの進歩が仕事を奪う」といったフレーズに日々危機感を感じている人が多いのではないかと思います.
これまでテクノロジーの恩恵を感じにくかった有機合成ですが,近年では例えばSciFinderやReaxys等の反応データベースの飛躍的な進歩によって,研究の進め方が大きく変わってきました.これからますます機械による自動化が進んでいくことが予想されますし,その流れに逆らうことはできないでしょう.「大学院時代から10年以上かけて身につけてきたスキルが役に立たなくなるのではないか?」と不安に駆られる人もいるかもしれません.
しかし周りを見渡せばわかるように,こういった自動化の流れはどこでも起こりつつあることです.有機合成化学に限ったことではありません.学生時代に身につけたスキルを使って定年まで過ごす可能性は極めて少なくなりました.全ての分野で生涯学習の重要性が高まっています.現在50代の人は逃げ切れるでしょうが,30・40代の人はまず逃げ切れません.逆にもっと若い世代はこういう考えを無意識的に受け入れています.
今までのスキルを捨てる必要はもちろんありませんし,全く違う分野の専門家になる必要もないでしょう.「有機合成化学」に加えて新しい視座が得られるスキルを習得することが,激動の時代を生き抜いていくために重要だと考えています.どんなスキルが大事と考えるかは人によって違うと思いますし,必ずしもデジタルスキルである必要もないでしょう.例えば,少なくとも2018年現在においては,使いやすい「分子模型」の作り手の需要が非常に高いことは有機化学者なら理解頂けると思います.
本ブログは「有機合成化学者のための生涯学習」をメインテーマとして運営しています.特に実験化学者がコンピュータにたしなむことで「化学の新しいカタチ」が見えてくるのではないかと期待しています.まずは計算化学・ケモインフォマティクスに加えて,(簡単な)プログラミングと統計学・機械学習周りを学んでいくことで,これまで見えていた景色をガラッと変えていくことを目指します.私自身,新しいことを学ぶ敷居が高くなりつつある年頃はありますが,このサイトが同じような環境・境遇にある人の学習の一助になれば幸いです.
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特にRDKitというpythonで使えるケモインフォマティクスライブラリについての記事を書いています.
「RDKitでケモインフォマティクスに入門」という記事から順番に読んで頂くことで,徐々に学んでいけるように解説しています.
>>「python」カテゴリーの記事一覧です.
本ブログではプログラミング言語としては初学者にもとっつきやすいと考えられるpythonを推しています.